2011年 02月 14日
天城越え
松本清張・原作。
出演:田中裕子
渡瀬恒彦
吉行和子
等
物語としては、ドロッとした暗い感じが始終漂う雰囲気で。
ある一人の少年が川端康成の「伊豆の踊り子」のごとく
下田から天城山を越えたい、という思いで足が向くままに山道を歩く・・・
そういった事からストーリーは始まる。
その道の途中で出会った女・ハナという娼婦とのひと時の交流。
この時のハナ役の田中裕子さんが
本当に綺麗で妖艶で。
映像の描写は結構激しいです、ただ性描写があってこその物語なので
お薦め、とまでは言いませんが
切ない思いがこみ上げる独特な感情になる映画ですね。
この作品で田中裕子さんは日本、海外でも女優賞を頂いているみたいです。
確かにすごかったですよ!!
殺気立つ程の迫力と悲しみと弱さだったり、
まさに一人の娼婦の生き様を演じきった、というような素晴らしい演技でしたね。
娼婦・ハナと、この娼婦に淡い恋心を抱く少年。
この少年もまた、性へのある’’トラウマ’’を抱えている。
そんな中で山道の中でたまたま出会った土工に用事がある、と言って
ハナは少年を置いていってしまう。
そして起こった事件。
その事件(殺人)の犯人は少年なのですが
ハナが無実の罪に問われてしまうのです。
このシーンがラストの方なのですが
すごく切ない、辛く厳しい場面です。
でも観終わったあと、年をとったかつて少年だった彼の
胸の奥深くにずっと消えずにあった’’想い’’、ハナへの初恋のような愛情や憧れが
じわっと伝わってきて
こちらも切なくもの悲しい気持ちになりましたね。
「さよなら」ってハナが声に出さないで少年に向かって言う場面があるんです。
それがすごく悲しいのにすごく美しいんです。
「兄さん、どこ行くん?」
田中裕子さんの一言一言が色っぽくて
でも体当たりの素晴らしい演技に圧倒される作品です。
あ、渡瀬恒彦さんも良かったです、
ひそかに好きな俳優さんの一人です